映画「怪物の木こり」レビュー

映画「怪物の木こり」を観た感想です。

(公式サイトよりお借りしました)

NETFLIXで公開されていたので観てみました。育児しながら途切れ途切れ観たので全部のシーンやセリフをしっかり理解したわけではないのだけど、書いてみます。

 

亀梨くんが主演の映画なんだけど、今までの自分だったらみてないかも。

(注:私ジャニーズ興味なし勢。好きなタイプはトムクルーズ。)

 

たまたま見たクワバタオハラくわばたりえさんのYOUTUBEで、「亀梨くんがめっちゃかっこええ!自分の抱いていたイメージと全然違くて、後輩思いの優しい人だ」と力説していたんですよ、半年前くらいに。でそれに影響されて、当時、亀梨くんがYOUTUBEやり始めた頃で、最初の何本かだけ動画見たんですよ。

動画の中で亀梨くんがバルセロナの映画祭に呼ばれて出てて、トラブルで衣装が届かなくて、急遽バルセロナでスーツとか買ってて。その時に「怪物の木こり」って単語が頻出していたので、それで記憶にあったから、「あー、あのときの映画ね」と思ってなんとなく観てみました。

 

以下、ネタバレします。

ネタバレが嫌な方は本作を見てからお読みください。

 

まず、全体的な感想としてはホラーサスペンス的に気軽に楽しめるエンタメかなという感じ。

主人公の亀梨くんはエリート弁護士なんだけど、サイコパスで、自分の人生に邪魔な奴はサクサク殺してきた。友人の医師もサイコパスで患者を人体実験に使ったりしてて、2人で色々共犯してきたような描写。

 

ある日亀梨くんが仮面を被った男に襲われる。なんとか逃げ切るが頭部に怪我を負い入院する。

数日入院して、退院に向けた問診で亀梨くんが頭の違和感を訴えると、ドクターから「脳内の血腫は無いから怪我は問題ない、あるとしたら脳内のチップだと思います」と言われる。

そこで初めて亀梨くんは自分の脳にチップが埋め込まれていることに気づく。

 

亀梨くんを襲った男は連続殺人犯で、亀梨くんのように脳内にチップが埋め込まれている人を殺して、斧で頭蓋骨を叩き割り、チップが含まれた脳みそごと回収するというまさにサイコパスな所業を繰り返していた。

 

脳内チップは30年以上前までは治療で使われていたが、倫理的な観点から今では禁止されている治療という設定。

 

そして、連続殺人の被害者の共通点は、みな児童養護施設出身であるということがわかり。

 

なぜ亀梨くんは本人の同意なしに脳内チップが埋め込まれたのか?

脳内チップはどんな働きをしているのか?

連続殺人犯はなぜ脳内チップを回収しているのか?

犯人は誰なのか?

 

これら複数の謎が同時進行で解き明かされていくのはテンポがよく、また、観客の予想を裏切る展開もイマドキの映画っぽかった。

 

ネタバレを言うと、真相は以下の通り。

30数年前、とある夫婦が何十人もの子供を誘拐し、脳内チップを埋め込む実験を繰り返していた。

夫婦の一人息子はサイコパスで、友達を骨折させたり問題を抱えていた。

息子を治したい一心で夫婦は脳内チップの研究をする。

健常な脳を持つ子どもに脳内チップを埋め込み、共感を司る部分を操作すると、サイコパスな性格に変貌する。

サイコパスになる方法がわかれば、サイコパスでなくなる方法もわかるはずーー。

でも結局息子は治せずに亡くなる。

自宅から手術に耐えられず亡くなった子供の遺体がたくさんみつかった。

亡くならずに生き延びた子供は児童養護施設の前に置き去りにしていた。

この夫婦は逮捕前に自殺して事件は幕引き。

 

真犯人は、この夫婦に脳内チップを埋め込まれた被害者だった。

脳内チップによってサイコパスとなり、妻に多額の保険金をかけて殺したりしていたが、刑事に殴られた時に脳内チップが停止し、サイコパスではなくなり人に共感できるようになった。

今までの所業に罪悪感を感じ、罪滅ぼしのために脳内チップが入ったサイコパスを殺して回っていた、というなんとも理解し難い殺人犯。中村獅童さんの熱演。

 

そして映画はクライマックス。

実は以前、亀梨くんは婚約者である吉岡里帆さんのお父さんを自殺に見せかけて殺しているんです。

 

中村獅童吉岡里帆を監禁して亀梨をおびき出して、殺害しようとする。

亀梨が吉岡里帆を助けにいくと、そこには仮面男が。

お前は誰だ、と聞くとご丁寧に仮面を外して中村獅童のご登場。

そこで父親を自殺に見せかけて殺したことも吉岡里帆にバレてしまう。

最後は火事で中村獅童だけ亡くなり、亀梨と吉岡里帆は警察によって助けられる。

 

全部がバレた亀梨くん。

吉岡里帆に更生を誓い、抱き合った瞬間、吉岡里帆が亀梨くんをぐさっと包丁でひと差し。

「許せるわけないでしょー!!」そりゃそうだ。

 

でも、実は亀梨くん、最初に犯人に殴打されて頭を怪我した時に、脳内チップが停止してサイコパスではなくなっていたんですね。もう残忍な所業をできなくなっている。

吉岡里帆が罪に問われないよう、正当防衛にするために吉岡里帆の首を絞めて跡だけ残して手を離す。

 

大量の血を流して亀梨くんは儚く息を引き取る、と言う結末。

 

よくできたプロットではあるけど、各所に無理がありすぎて私は没入できなかった。

こういうサスペンスものって、整合性を追求して辻褄を合わせようとするあまりに「人の心の芯の部分」までも軽んじてしまっているから、現実味がない。

 

このトリックを使いたい、この時事ネタを使いたい、というのが先にあって、次に「観客をあっと驚かせる展開」とか「大どんでん返し」で山場を作るというのが来てしまうから、犯人の動機が弱かったり、「ここに至るまでに何箇所も捕まえられるポイントあったよね、なぜここまで野放しなのか?」みたいな興醒めを生んでしまう。

 

名探偵コナンだって相棒だってそうじゃん、と言われればその通りだし、観客というのはジェットコースターに乗っているかのようにスリルを味わい、血みどろに怯え、あっとおとどく展開に息を飲み、お涙頂戴で感動することを求めて映画を見るものだとも思う。

 

でも、私は「人の心の芯の部分」に共感したい。

例えば、まともな母親なら、自分の子供を治すためとは言え何十人もの子供を誘拐して殺したりサイコパスにしたりしない。

まともな母親ではなかったからそんなこと出来たんだと思うけど、そんなこと出来ちゃう自分が一番サイコパスじゃない?矛盾してるよ。

それから、中村獅童が罪悪感に苛まれてサイコパスを殺して回るっていうのもどういう理屈やねんと。普通、脳内チップ埋め込まれた人リストを入手できたのなら、人権団体とかに訴えかけて脳内チップを除去するプロジェクトを立ち上げるとかさ、平和で前向きな解決策がいくらでもあるじゃない。

 

物語の一番の根幹である「殺人の動機」が薄っぺらいので、その上に何枚もいろんなベールを被せてもったいぶったりミスリードさせたりしても、虚しいというか。

 

警察との手に汗握る心理戦だったりド派手な殺し方だったりは、誇張して非現実的でも映画としての違和感はないんだけどね。

 

骨太なドキュメンタリータッチの映画だとあんまりキャッチーじゃないしね、亀梨くんがエリートで残忍なサイコパス殺人鬼っていう役柄だから注目が集まるわけだし。

 

初めての映画レビューで批判的なことばかり書いてしまった。

もっと推しの映画をレビューして褒め称えたいね。

 

この映画の良かった点は、脳内チップでサイコパスON/OFFできるという設定かな。

 

岡田斗司夫さんのYOUTUBEで「ひとの気持ちが聴こえたら」という書籍の紹介、解説動画がある。

youtu.be

自閉症スペクトラムアスペルガー症候群の人がTMS治療という脳に電極を当てる治療をした時の体験談で、とても興味深かった。

人の気持ちや場の空気を読むことができず、苦労しながら中古車オーナーをしているジョン。TMS治療をきっかけに、今まで何も感じなかった音楽が心を揺さぶって感動できるようになり、相手の考えていることや察してほしいことが手に取るようにわかるようになる。

素晴らしい体験であると同時に、今までの人間関係に亀裂が入ったり(自分のことを見下し、軽蔑し、馬鹿にしているということが自覚できるようになってしまう)、治療による副作用で強い抑鬱状態になったり奇行に走ることもある。

まるで「アルジャーノンに花束を」のような話。

 

そしてこのTMS治療、なんと、うつ病の治療として日本でも現在行われているのだ。

実は過去に交際していた彼氏がうつ病だった。

投薬治療だけで良くなるとは思えず、さまざまな可能性を調べる中で、このTMS治療のことを知った。結局私の元彼はTMS治療を受けることはなく、交際も終了したのだが、なかなか症状が良くならない患者にとっての一筋の光のような治療だと思う。

ただし、TMS治療はまだ解明されていないことも多く、効く人と効かない人がいる。1回で効果がある人もいれば何十回もやって少し効果がある人もいる。脳への磁気の当て方もドクターによってさまざまらしく、マユツバモノという可能性もある。

 

最近どこかのネットで見かけたのだが、このTMS治療、発達障害のある子どもに有効だとして治療をさせるクリニックがあるらしい。有効性が証明されていないらしく、警鐘を鳴らすような記事だった。

「親の不安に漬け込んだひどい医者もいるもんだ」と思ったけど、もし我が子が発達障害サイコパス的な言動を繰り返していたら、私はどうするだろうか。

藁にもすがる思いで、試してみるんじゃないだろうか。

 

「怪物の木こり」の脳内チップのくだりを見ながら、そんなことを考えた。

 

今後、もっと医療技術が発達して、いろんな脳の病気を苦しまずに改善できる世の中になるといいな。

そして、我が子のことになると周りが見えなくなって客観的な判断ができなくなり、愛情の深さゆえに間違いを起こしてしまうのも一つの母性だ。自分がそうならないとは断言できない。それほどに親というのは脆くて不完全だ。

 

なんか映画のレビューからだいぶそれちゃったな。

次はもっとお気楽で楽しい映画レビューにします。

おやすみなさい。